| 逆境をはねのける強さを(長崎新聞「うず潮」2008.10月号) |
ながさき地域政策研究所 常務理事・調査研究部長 菊森 淳文
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十月の株価暴落と急速な円高は八十年に一度とも言われる激変であり、今後一年間程度、アメリカ・日本の景気後退につながる可能性が大きいと考えます。私は、今回の金融変動を見るにつけ複雑な心境になります。それは、私自身、デリバテイブや証券化と言われる金融手法のわが国への導入を進めてきたからです。前者に関しては、先物・オプション取引を規定した金融先物取引法制定を当時の大蔵省を民間の専門家としてお手伝いして来ましたし、後者に関しても住宅金融公庫の住宅ローン証券化や大手不動産会社のビルを組み込んだREIT(不動産投資信託)の導入に際し、経済や市場への影響をアメリカでも調査してきたからです。どんなに優れた道具である金融商品でも、使い方を誤ったら大きな被害が出ることは自明の理です。昨年来のアメリカのサブプライムローン問題や九月に起こったリーマンブラザーズの破綻は、格付け会社と一緒になってリスクを曖昧にした商品組成と、企業や投資家の行き過ぎたリスクのとり方が原因です。
金融変動は落ち着けばいずれは元に戻る性格を持っていますが、世界及びわが国の経済は今後一年間位にわたってマイナスの影響を受けざるを得ません。わが国は五年間位主として輸出産業が景気を牽引してきたので、欧米の景気後退と円高は景気の足を引っ張ることは避けられません。また、株価の下落は企業の投資意欲をそぐのみならず、個人消費も抑制して将来に備えて貯蓄行動をとらせることになりがちです。
わが国全体の景気後退は、他の地方と同様、長崎県経済にも影響を及ぼす可能性があります。企業の設備投資や個人消費が伸びず、円高のため外国人観光客が減少する一方、原油価格が落ち着き、今年夏まで懸念されていた物価上昇が起こりにくくなります。ただ、このような時期だからこそ、地域振興策や官民協働を積極的に進めることが必要です。地場産業の経営革新に加え、新幹線や道路等のインフラ作りや街作りと観光客誘致、物産振興、企業誘致などを景気に関係なく次々と実行していくことが重要です。いずれ来る景気回復に備え、行政も企業も県民も逆境をはねのける強さを持ちたいものです。
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菊森 淳文(きくもり あつふみ)
鞄本総合研究所調査部社会経済政策研究センター客員研究員
東京大学法学部卒業、三井住友銀行(現)入行
米国シカゴ大学経営大学院にてMBAを取得
元京都大学大学院・信州大学、現長崎県立大学非常勤講師(政策形成論)
金融・投資理論及び実務、財政・地方行政、経営学・経営戦略、
経営事例研究・経営コンサルテイング、中小企業論、
情報化・インターネット利用のビジネスモデル
「学習する会社のナレッジコラボレーション」ほか著書・論文多数
経済産業省「21世紀社会経済システム研究会」座長他政府委員を歴任
長崎県・大村市・横浜市及び日本経団連中小企業委員会の各委員を歴任
中小企業庁長官賞、清水晶記念マーケテイング論文賞受賞 |
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