Nagasaki Institute for Public Policy




























食料が世界を動かす日(長崎新聞「うず潮」2011.6月号より)

ながさき地域政策研究所 常務理事・調査研究部長 菊森 淳文





  本年4月、世界銀行は、世界の食料価格が2008年のピーク付近にとどまっており、食料価格指数は1−3月期に前年同期比36%上昇したと発表しました。これは、中国など新興国の人口増加、水準の上昇や先進国の金融緩和政策によるものです。食料価格の上昇により、北アフリカ・中東地域で民衆蜂起が起こり、インフレを加速させ、世界経済の成長鈍化につながりかねない状態です。一方で、東日本大震災では、安心安全な食料の確保がいかに重要であるかを再認識させられました。
私は、農水産業の盛んな長崎県にとって食料供給基地であることが大きなメリットになる時代が来ると言い続けてきました。もちろん、とうもろこし等の飼料作物の高騰を受けて、畜産経営が厳しくなることも否定できませんが、農畜水産品の価格上昇によって、コストの一定部分は吸収されます。むしろ高い価格でも売れる高品質な商品を生産すること、高付加価値の加工品を製造・販売することにより、農家・漁家収入を確保できるのです。
また、「種」が価値を高める時代も到来しています。アメリカでは四十年も前から動植物の「種」を保存・活用することが国家・動植物園や穀物商社などでおこなわれて来ていましたが、わが国では余り重視されてきませんでした。長崎県にもびわ「茂木種」の原木が保存されていますが、県内の伝統野菜や果実の種を管理することが食のブランド化を図るうえで重要な課題になることは、夕張メロンなどの成功事例を見ても明らかです。
そして、食料が国境を越える「グローバル時代」を迎えており、長崎県の農水産品の安全性・高品質性が海外で評価される時代がすぐそこまで来ていると思います。食料は人間の命をつなぐためのものであり、自給率の向上による食料安全保障を確保しながら、食料を積極的に国内外に供給することが、「食料が世界を動かす日」を迎えるにあたって、長崎県が最優先で取り組むべき政策の一つであると考えます。






菊森 淳文(きくもり あつふみ)
鞄本総合研究所調査部社会経済政策研究センター客員研究員
東京大学法学部卒業、三井住友銀行(現)入行
米国シカゴ大学経営大学院にてMBAを取得
元京都大学大学院・信州大学、現長崎県立大学非常勤講師(政策形成論)
金融・投資理論及び実務、財政・地方行政、経営学・経営戦略、
経営事例研究・経営コンサルテイング、中小企業論、
情報化・インターネット利用のビジネスモデル
「学習する会社のナレッジコラボレーション」ほか著書・論文多数
経済産業省「21世紀社会経済システム研究会」座長他政府委員を歴任
長崎県・大村市・横浜市及び日本経団連中小企業委員会の各委員を歴任
中小企業庁長官賞、清水晶記念マーケテイング論文賞受賞
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