Nagasaki Institute for Public Policy




























日本ホスピタリテイーマネジメント学会での論文報告


2009年9月26日、東洋大学(東京都文京区)で行われた日本ホスピタリテイーマネジメント学会・日本国際観光学会・日本観光研究学会・日本余暇学会・ツーリズム学会による合同学会で、当財団の菊森淳文常務理事が、「長崎における国際観光客の観光行動とホスピタリテイー」と題した論文発表を行いました


【論文要旨】

1.国際観光客の分析のフレームワーク
 国際観光客に関する分析や研究には、大別すると、@発地側(国際観光客の国・地域別旅行ニーズ等)、A着地側(国際観光客の日本での観光行動・評価分析等)の二つがある。@については、国土交通省やJNTO(国際観光振興機構)等の先行調査研究があるが、体系的な研究は少ない。Aについては、国・県・市で幾つかの調査研究はあるが、統一的基準による比較可能な調査研究はない。本稿は、Aについて、長崎の特徴的な観光契機である「国際観光船(クルーズ)」と、他地域と同様の一般的な国際観光客について調査した。長崎は交通拠点以外の地方都市に位置付けられ、このような都市へのA.旅行契機、B.観光客行動(観光行動、購買行動)、C.評価(満足度)を分析した。
2.国際観光船(クルーズ)の観光客
 長崎には昭和34年から平成19年までで725隻の国際観光船が入港し、約40万人が来訪してきた。特に、平成17〜19年は毎年3万人以上が来訪している。本稿では平成18年10月23日のコスタアレグラと同28日のサファイアプリンセスの長崎寄航時に調査した。国際観光船のA.旅行契機は海外船社によって決定される。B.観光客行動については、船で来訪した国際観光客の58%がオプショナルツアーに参加しており、33%が参加せずに自ら観光施設を回っている。観光施設中、平和公園・原爆資料館が76%と最大で、グラバー園(42%)、出島(26%)、中華街(24%)がこれに続いた。平和公園・原爆資料館が最大となったのは、国際観光客にとって、被爆地であることがクルーズに参加する大きな動機となっているためであると考えられる。また、利用交通機関については、オプショナルツアー参加者は貸切バス(42%)、路線バス(35%)が最大であったが、非参加者は路面電車(60%)、タクシー(17%)を利用しており、初めて来訪した国際観光客の大半が公共交通機関を利用していることがわかる。C.評価については、総合満足度「非常に満足」54%、「満足」41%であったが、歓迎セレモニーの内容、買い物のしやすさはおおむね良好であった一方、両替の準備・手際よさ、外貨の対応・カードの利用については「非常に満足」「満足」あわせて半分以下となるなど、店舗が国際観光客に対応できていないことがわかる。また、長崎に対する肯定的印象としては、「地元の人が親切だった」「街の雰囲気が良かった」が上位を占めたが、否定的印象としては、「お土産になるものが少なかった」「観光施設が少なかった」が上位を占め、観光情報の提供や商品開発が課題であることがわかった。
3.一般の国際観光客
 一般の国際観光客(国際観光船以外で来訪する観光客)については、平成19年12月〜20年2月、宿泊者について調査した。国別では中国40%、台湾30%、韓国24%の順に多かった。来訪回数は、「初めて」が38%、「4回以上」が30%と二極分化している。A.旅行契機については、「ツアーに入っていたから」が38%と最大で、「長崎の歴史や文化に興味があるから」18%、「被爆地だから」14%と続いた。長崎の知名度は、被爆地であること以外に東京・大阪に比べてまだまだ低く、ツアーの造成を発地旅行会社に働きかけることが必要である。B.観光客行動のうち観光行動については、平和公園・原爆資料館が43%と最大で、稲佐山(長崎港・市街地が一望できる)21%、長崎歴史文化博物館19%、出島7%と続いた。購買行動については、食料品46%、雑貨・化粧品21%、伝統工芸品20%が多い。C.評価は、観光施設の豊富さ、交通の便、長崎の人の親切さ、標識・案内板のわかりやすさ、会話など長崎の人とのコミュニケーションは「満足」「やや満足」で95%以上であったが、料理の味、お土産の豊富さについては「不満」「やや不満」あわせて1割程度あり、課題を残している。国別に見ると、韓国からの観光客の不満が大きい。また、長崎がもっと良い観光地になるために望むものとして、「祭りやイベントの充実」15%、「史跡・名所の整備」12%、「情報提供サービスの充実」11%、「クレジットカードが使用できる施設の充実」10%の順に多く、観光情報の不足、買い物の利便性が低いことが指摘される。
4.ホスピタリテイーを高めるために
 国際観光船の観光客、一般の国際観光客ともに、長崎のホスピタリテイーについては概ね高い評価を得ているものの、より高次のホスピタリテイー・マネジメントを実現するためには次の三点について改善が必要となる。
(1)来訪観光客に対する情報の提供:長崎を来訪する国際観光客が観光・購買両方の行動を取る際に必要となる、観光施設・店舗等に対する十分な情報が提供されていない。具体的には外国語による観光施設・公共交通機関のガイドやマップ等の情報が国際観光船内、宿泊施設内で提供されることが必要である。
(2)購買に対する支援:調査で明らかとなった両替の準備・手際よさ、外貨の対応・カードの対応を改善することにより国際観光客の購買行動への支援が、観光消費額を高めるためにも不可欠である。現状、地元商店街や大手家電量販店では中国人向け銀聯カードへの対応が出来るようになったが、両替については地元銀行との連携が必要となるであろう。
(3)発地に対する観光情報の提供:交通拠点以外の地方都市である長崎は、国際観光客については現状受身とならざるを得ないが、国際観光客のニーズの多様化に伴い、観光・購買情報の発地に対する提供が必要となる。特に今後観光客の増加が予測される中国については、平成21年7月に個人ビザが解禁されており、富裕層を中心とした個人旅行が拡大する可能性が大きいので、グルメ、温泉、美容等、ターゲット市場ごとのきめ細かな情報提供を現地媒体・旅行会社と連携して行うことが必要である。
(参考文献)
(1)財団法人ながさき地域政策研究所(2007)「国際及び国内観光船入港に係る経済波及効果等調査業務報告書」
(2)同(2008)「長崎市における外国人観光客誘致に向けたアンケート調査研究業務報告書」
(3)独立行政法人国際観光振興機構(JNTO)(2007)「JNTO訪日外客実態調査2006−2007」
(4)服部勝人(2004)「ホスピタリテイー学原論」内外出版


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